NHKマイルカップ 紹介記事
この記事は、今週末5/10(日)に行われる、GⅠ・NHKマイルカップを初心者向けに説明をする記事です。①NHKマイルカップってどんなレース?②どんな馬が出走するの?の2章に分けて解説していきます。
それではさっそく①NHKマイルカップってどんなレース?から参りましょう。
①NHKマイルカップってどんなレース?
NHKマイルカップ(以下NHKマイル)は3歳馬限定・東京競馬場芝1600mで行われるGⅠレースです。このレースのファンファーレは、毎年NHK交響楽団(N響)が演奏するのが恒例となっていますが、今年はないのが個人的に残念です(しょうがないですけど)。
ただ、NHKで放送をしてくれるみたいなので(NHKでは天皇賞やクラシックレースなどの特に大きなGⅠレースを毎年放送していますが、今年は昨今の情勢で皐月賞や天皇賞・春の放送がなかったので当然NHKマイルもないものだと思っていたら放送するらしくびっくりしてます…)、その点は楽しみです。
個人的に、フジテレビは煽り上手で気分が高まる一方で、京都競馬場などほかのレースを映す関係でやや忙しく、NHKは放送するGⅠレースだけの情報を伝えてくれるのでしっかりとパドックや返し馬で馬の様子を確認できますが、終始淡々と進む印象もあります。この辺は好みですので、チャンネルを回しながら自分に合う方を選ぶのもいいでしょう。
閑話休題、NHKマイルの紹介に戻ります。
先週の天皇賞(春)は戦前から行われてきたレースですが、このレースは1996年にGⅠとして新設されたレースです。1953年から1995年まで行われていた東京競馬場芝2000mのGⅡ・NHK杯というレースが形上は前身となっていますが、NHK杯は日本ダービーの前哨戦という位置づけのレースで、NHKマイルとは少し位置づけが違います。
NHKマイルは、かつては「マル外ダービー」と呼ばれたレースでした。マル外とは、外国産馬のことで、○の中に外と書いて表記されることからマル外と呼ばれるようになりました。ダービーはすべてのホースマンの夢舞台、3歳馬の頂点を決める日本ダービーのことです。
競馬は、そもそもは国内の畜産振興、馬匹改良のために行われていた競技であり、さらに国内の生産者の保護などの理由もあって、マル外の馬は出走できるレースが制限されていました。例えば、日本ダービーにマル外の馬が出走できるようになったのは2001年になってからのことでした(さらに当時はマル外の馬は2匹までという条件付きでした)。
1980年代~1990年代前半は競馬の国際化、自由化が声高に叫ばれた時代で、マル外のための目標となるGⅠレース、あるいは日本ダービーの2400mが長い短距離馬のためのGⅠレースの要求がかねてからあったこともあり、NHKマイルが新設GⅠとして誕生しました。
このような「マル外ダービー」としての歴史があるNHKマイルですが、現在では単にダービーは距離が長いような馬たちのためのレース、「3歳マイル王決定戦」として定着しています。
日本ダービーが3歳馬で最も優秀な馬を決めるレースだとすれば、NHKマイルは3歳馬の中で最もスピードのある馬を決める、「スピード王決定戦」とも言えるかもしれません。
(ちなみにマイルとは、ヤード・ポンド法における長さの単位で、正確には1マイル=1609.344mですが、日本(の競馬界)では1マイル=1600mとして扱います。1600mのレースのことをしばしば「マイル戦」と呼んだり、マイルあたりの距離のレースが得意な馬を「マイラー」と呼んだりすることもしばしばあります。)
②どんな馬が出走するの?
では、そのようなスピード自慢がそろう3歳マイル王決定戦・NHKマイルに出走するのはどのような馬たちなのでしょうか。
この章では、有力馬4頭を紹介します。戦績と注目点を簡潔に紹介していますので、勝ちそうだと思う馬、応援したい馬を探してみてください。
ここで紹介していない14頭もチャンスは十分ある馬ですのでJRAのHP等で確認してみてください。
それでは紹介していきます。
2枠3番 レシステンシア
☆戦績:5戦3勝。主な勝鞍はGⅠ・阪神ジュヴェナイルフィリーズ、GⅢ・ファンタジーステーク。
デビューから3戦3勝でGⅠ・阪神JFを圧勝し、2歳女王に輝いた。その後はGⅢ・チューリップ賞3着、GⅠ・桜花賞2着と勝ててはいないが堅実な走りは見せている。今回も得意なマイル戦で持ち前のスピードを生かしGⅠ2勝目を挙げたい。
☆ここに注目!
○レーススタイルは「逃げ」。持ち前のスピードを生かし序盤から先頭近くでレースを進め、逃げ切りを狙う。
○メンバー唯一のGⅠ馬。前走のGⅠ・桜花賞は相手が強かった印象で、雨が降ってぬかるんでいたのも影響したかもしれない。良馬場ならGⅠ・阪神JFで見せたスピードの違いを活かすことができるだろう。(おそらく)1番人気になるが、それに恥じないレースをこれまで見せている。
○騎手はC・ルメール。3年連続リーディングジョッキー(最多勝騎手)に輝いている。この馬に乗るのは初めてなので馬と呼吸を合わせることが求められる。
○過去5年で、前走GⅠ・桜花賞を出走していた馬が2勝を挙げている。今回のメンバーで前走GⅠ・桜花賞を走ったのはレシステンシアただ1頭。ちなみにそのうちの1勝は2016年メジャーエンブレムで、この馬とレシステンシアは1番人気、騎手がルメール騎手、「逃げ」のレーススタイル、前走が桜花賞、父がダイワメジャーなど共通点も多い。目指すはメジャーエンブレムの再現か。
○不安点があるとすれば、過去5戦すべて牝馬(メス馬)限定戦を走っており、今回初の牡馬(オス馬)混合戦でどうなるか分からないということか。また、前走のGⅠ桜花賞は重馬場での厳しい展開で2着と頑張ったが、その疲れが残っていると持ち味の粘り強さが出せずあえなく馬群に飲み込まれるということも想像はできる。
8枠17番 サトノインプレッサ
☆戦績:3戦3勝。主な勝鞍はGⅢ・毎日杯。
デビューしてから無敗でGⅠまで駒を進めてきた。しかも3戦とも上がり3ハロン1位(1ハロンは約200m。上がり3ハロンとはゴールまでの最後の600mを走る速さのことで、その馬の最後の末脚がどれほどのものかを知る一つの指標になりうる)。長くいい脚を使える印象だ。今回はメンバーも強くなるが、素質では引けを取らない。
☆ここに注目!
○レーススタイルは「差し」or「追い込み」。末脚を活かして父ディープインパクトのような差し切り勝ちを目指す。
○騎手は生けるレジェンド武豊。このNHKマイルは最多タイの3勝だが、最後に勝ったのは2006年のロジックで、しばらく勝ちから遠ざかっているとも言えるかもしれない。サトノインプレッサとは前走のGⅢ・毎日杯で初コンビを組み見事勝利している。
○不安点があるとすれば、ゲートの出があまりよくないこと。末脚は確かなものがあるから勝てているが、GⅠの舞台で相手も強くなると後ろからでは届かない可能性もある。また、今まで良馬場で走ったことがなく、実は良馬場だとあまり…という可能性もなくはない。
1枠2番 タイセイビジョン
☆戦績:5戦3勝。主な勝鞍はGⅡ・京王杯2歳ステークス、GⅢ・アーリントンカップ。
デビューから5戦すべて1600m以下の距離を使われている。負けた2回もGⅠ・朝日杯FSをふくむ2着2回で3着以下に負けたことはない。5戦中4戦で上がり3ハロン1位を記録。今回も安定感を武器に差し切りを狙う。
☆ここに注目!
○レーススタイルは「差し」or「追い込み」。堅実な末脚で差し切りを目指す。
○騎手は石橋脩。タイセイビジョンとのコンビでは2戦2勝、前走のGⅢ・アーリントンカップも貫録勝ちを見せた。
○前走勝利したアーリントンカップはNHKマイルの前哨戦のひとつだが、アーリントンカップに出走経験のある馬でNHKマイルを勝ったのは、過去10年では2014年ミッキーアイルのみ。前走でGⅠ・皐月賞やGⅠ・桜花賞を走り強い相手と戦ってきた馬たちと比べるとやや分が悪い印象だ。
7枠14番 ルフトシュトローム
☆戦績:3戦3勝。主な勝鞍はGⅡ・ニュージーランドトロフィー。
この馬もサトノインプレッサと同じく3戦3勝。3戦とも上がり3ハロン1位。相手は強くなるが底知れぬ魅力がある。騎手もオーストラリアの天才騎手D・レーンに替わることも注目だ。
☆ここに注目!
○レーススタイルは「先行」or「差し」。中団あたりから流れに乗りたい。
○騎手はオーストラリアの若き天才D・レーン。ルフトシュトロームに騎乗するのは初めてだが、昨年も初めて乗ったノームコアやリスグラシューでGⅠ勝利、今年4月のGⅠ・皐月賞でもサリオスでほぼ完ぺきなレースを見せて3番人気2着と馬の持つ力を引き出した。信頼のおける騎手と言えるだろう。
○前走勝利したNZトロフィーは、アーリントンカップに並ぶ前哨戦のひとつだが、アーリントンカップよりはちょくちょく3着以内に入ってきている。ただ、NZトロフィー1着→NHKマイル1着だったのは過去10年で2012年カレンブラックヒルだけで、どちらかというとNZトロフィーで負けた馬がNHKマイルで激走する印象もある。
○不安点は、過去3走すべて中山競馬場で走っていること。直線の短い中山競馬場から、今回直線の長い東京競馬場に替わり、長くいい脚を使うことが求められたときに対応できるかは未知数だ。
以上が有力馬4頭の紹介になります。
この中ではレシステンシアが1番前、「逃げ」るか3番手以内につけるレースをすると思われます。あとの3頭はゲート次第ですが、「差し」のレースをする可能性が高いように思われます。直線途中で先頭に立つレシステンシアをめぐって後続殺到、末脚比べの真っ向勝負になるでしょう。
ここでは4頭しか紹介していませんが、実はNHKマイルというレースは「荒れる」レースとして有名です。「荒れる」というのは人気薄が3着以内に入って波乱になることを言います。このレースでは特に、人気薄の馬、前走まで見どころなく凡走していたように見えた馬が急に走ったりします。
過去10年でも10番人気以下だった馬が7頭も3着以内に食い込んできています。2013年マイネルホウオウは10番人気で1着でしたし、昨年2019年も14番人気だったケイデンスコールが2着に入っています。
ですので、どのレースでもそうですが、特にこのNHKマイルというレースではここで挙げていない馬、人気薄の馬にも注目は必須と言えます。
それでは、5/10(日)15:40発走のNHKマイルをお見逃しなく!
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